Interview | バー文化の開拓者、「(株)喜色満面堂」西尾圭司対談

堺のバー文化を語る上で外すことが出来ない一人。「株式会社 喜色満面堂」の西尾圭司さん。現在堺市内では、中百舌鳥のクラフトビールのお店「enibru」「The 2nd Vine」を経営。2013年には大阪市内京町堀に「dig beer baR」をオープン。堺のバー文化の開拓者であり、堺市を「内と外」両方の視点で見ることが出来る人物に、『& Rice』プロデューサー樋口恵介との対談をお願いしました。

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堺のバー文化を作り続ける男

樋口「それまでクラフトビール専門店など一つもなかった地に、店を作るところからはじめて、現在西日本でビールシーンを牽引しているのは西尾圭司でしょう。僕は西尾さんがいた堺と、いなかった堺では違うものになっていたんじゃないかと思うんです」

西尾「僕はこの13年間で、深井で3回、中百舌鳥で3回、そしてこの京町堀で1回と合計7回店を作りました。その都度、その地にあった仕掛けをその場でやってきたと思います」

樋口「当時は、バルやタパスなんて誰も知らない時期ですよね」

西尾「やりはじめた頃は、今ほど強くは思っていませんでしたが、中央にはごまんとあっても、地方にはなくて誰もやっていないことを意図的にやりましたね。店内に足を踏み入れた瞬間、壁に蛇口の並んだ変な店(enibru)を作ったりね」

樋口「目に見えて衝撃的でしたよね。突然、中百舌鳥に最先端の店を作った。『enibru』は、堺のバー・シーンにまたひとつ一石を投じたと思うんです」

 

東京~大阪~堺

樋口「バーのマスターと話していると『サラリーマンでけへんから、バーやってるんやぁ』と冗談まじりで言う人がいます。ところが西尾さんが面白いのは、ちゃんとサラリーマンをやり続けることが出来る人がバーをやられたということです」

西尾「サラリーマンをやって外のことも見たというのは原風景としてありますね。東京でとっぽいこと派手なことを見て、東京でやっていたものを故郷に持ち帰ってきた」

樋口「やっぱり堺や大阪はあきませんか?」

西尾「東京の方がスクラップビルドが早いですね。大阪は保守本道で、同業者からはなかなか理解されません」

樋口「長年やってた西尾さんでもそうですか!?それでも堺や大阪でやるのはやはり故郷だからですか?」

西尾「東京では僕ぐらいの人間はごまんといる。保険をかけているという部分もあるんです。自分の器量で最高点を取れる場所でやっている。ただ、その場におけるプロセスや生い立ちというものもあって、自分のやりたいことを訴えるのにローカルの方がいい。だから、田舎でやっているのを東京の奴らが見に来たらいいとは思ってます」

樋口「最初から意図的にやられてますよね」

西尾「やっているのは、自分がいいと思ったことだけですし、それを折れずにやってきて、自分のやってきたことは間違いじゃなかったと思います。丁度、深井で『アジャラ』をやって5年目の時に、大阪のバーの先輩の方がわざわざ来られたことがありました。それから数か月後、新しい店を出したというので訪ねたら、これが『アジャラ』を完コピされてて驚きました」

樋口「それは怒らなかったんですか?」

西尾「いや、嬉しかったです。嬉しいぐらいに完コピでした(笑)」

樋口「俺やったら怒ってるわ!(笑)」

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