Culture | 挑戦し続ける漬物屋、伊勢屋食品の水なす漬

美味しくするだけならいくらでもできる

漬物は発酵食品のイメージがありますが、発酵させてはいけない商品でもあります。塩分を控えめにした事で、必然的に伊勢屋は発酵を抑えることがより困難です。
「初発菌というんですが、最初の菌が出るともうダメです。商品を入れたビニールがスーパーで買って持って帰る間にでも膨らんでしまったりしますよ」

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では、最初から全ての菌を排除すればいいのかと、そうもいきません。たとえば糠漬けなどは、米糠を乳酸発酵させた糠床に野菜を漬けこんだもの。
「乳酸菌がついた方が美味しいんです。ただ美味しくするだけならいくらでもできます。しかし、スーパーで売っている商品を発酵させるわけにはいかない。賞味期間中ずっと同じ味をどう保つかが難しいんです。なるべく早く商品を回転させることが、美味しい漬物を提供する秘訣の一つですね」

伊勢屋の菌との戦いは徹底的です。
仕入れた原菜は、次亜塩素酸ソーダで消毒したあと、塩漬けされるなど漬物への工程を経ます。

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「出来上がった漬物も、オゾン水で丁寧に洗って減菌した後、真空パックします」
糠漬けでは糠も一緒に袋詰めしますが、専門店でスーパーでも違った糠床を使っています。
「専門店では大体0度の冷蔵ケースなので少し発酵した糠を使えますが、スーパーの冷蔵ケースは5度~10度ぐらいですので、発酵していないサラサラの糠を使っています」
伊勢屋の漬物が美味しい理由をもうひとつあげるとすれば、この手間をかける丁寧な仕事ではないでしょうか。
「漬物作りは、美味しい菌との戦いですよ。手をかけるほど美味しいものが出来ます。やっぱり美味しいもので商売したいという気持ちがあります。スーパーに商品を卸すような漬物屋で、私たちのような昔ながらの漬物屋はもう少ないでしょうね」

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