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2015年10月14日

「堺まつり」にみる「堺の食」~2014年 第41回堺まつりレポート~

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「堺まつり」は、2014年で41回目の開催を迎え、市民に親しまれている大きな祭の一つです。堺はもちろん他府県からも物産や特産のブースが出店し、様々な美味しいグルメを味わえる一日です。「&Rice」では、「堺の食」をテーマに、市の内外からやってくるお客様や出店の方にインタビュー取材を試みました。
果たして「堺の食」はどう見られているのでしょうか?

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■歴史書の中の『堺』
沢山のブースが出ているザビエル公園は人でごった返していました。まずは徳島県の物産ブース。こちらには徳島の五つの市町村が協同して出店されているとのこと。話を伺ったお店の方は、堺は初めてとのこと。

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「『堺まつり』の人出の多さに驚きました。持ってきたシイタケもちくわも全部売り切れ。売るものがなくて困っています」
と嬉しい悲鳴。徳島の方から見た堺のイメージはどうでしょうか?
「堺といえば、食は思い浮かばないですが、包丁、線香、南蛮貿易。日本史で習ったイメージが強いですね」
徳島と堺の歴史上での結びつきは強いものがあります。戦国時代に織田信長に先駆けて堺に幕府を開き、最初の天下人とも言われる三好長慶ら三好一族は徳島が本拠地。縁の深い南宗寺に三好長慶の座像が出来たことがニュースになったばかりです。
「そのニュースは知ってますよ」
とどうやら歴史には詳しいご様子。
堺と関わりが深いといえば、与謝野町(京都府)のブースがありました。与謝野晶子の夫、与謝野鉄幹の一族の出身地という縁もあって、5~6年ほど前から堺まつりにも参加するようになりました。

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「名産は丹後ちりめんや特Aランクを取ったこしひかりです。カステラや羊羹も持ってきているのですが、お菓子を本場の堺で売るのはちょっと気が引けますね」
お茶や南蛮文化の「堺」だからと、和菓子やカステラが思い浮かぶようです。
「堺は美味しいお店が多い印象もあります。有名な『ゲコ亭』や『いわし舟』。綺麗になって驚いた山之口商店街にも馴染みの店があって、いつも親しく迎えてくれるんです」
すっかりお馴染みさんで交流も楽しんでおられます。
時代と距離を越えた大きな交流も生まれていました。この日、開口神社と大パレードで仙台からすずめ踊りの一団「伊達の舞い」が来堺していました。堺の石工が伊達政宗の前で踊ったことが始まりとされるすずめ踊りは、何百年ぶりに里帰りし、近年は堺でも多くの踊り手が生まれました。毎年、仙台の青葉まつりには堺から、堺まつりには仙台から踊り手が出場する交流が続いているのだそうです。東北大震災以後、その繋がりは一層深くなったとか。
開口神社で奉納舞いを終えたばかりの仙台の踊り手さんにもインタビューしました。

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「昔はよちよち歩きだった堺の踊り手さんも10年たつと違いますね。もうずっと堺に来ていてお友達も沢山できました」
では堺の食にもお気に入りがあるのでは?
「串カツや粉ものでしょうか? 仙台に比べても大阪の食文化は『あたり』の方が多いですね。どこにいっても美味しいです」
「堺」というよりは、「大阪」というくくりで食文化を捉えられているようです。
しかし、大阪の食文化を支えていたのも「堺」です。一つはもちろん包丁。そしてもう一つが「昆布」です。
堺まつりには、堺の「昆布」が勢ぞろいしていました。

■場所と技術と人が揃った『堺』

「堺昆布加工業協同組合」の物産ブースには立派な出汁昆布から、刻み昆布、オボロ昆布と様々な昆布が並んでいます。ブースにいらした9代目理事長・松本功さんが、堺と昆布の歴史を紐解いてくれました。

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「江戸時代に北前船の西廻り航路が拓かれて、蝦夷(北海道)や東北で獲れた昆布が堺に運ばれてくるようになりました」
西廻り航路は、上り航路が北から日本海を通って下関を廻り、瀬戸内海を大阪へ向かう航路です(下りはその逆)。大型船を使って効率よく大量輸送が出来るようになったとされています。
「堺には優れた包丁があったので、刻み昆布やオボロ昆布の文化が盛んになったんです。農家で後継ぎになれない次男坊や三男坊などが、オボロ昆布の職人になったようです。最盛期にはオボロ昆布の職人で100軒以上もあったそうです。オボロ昆布は敦賀も盛んですが、わざわざ敦賀の職人が堺に修行にきていた時代もあります」
刃物作りの技術に加えて、堺が人口密集地で職人になる余剰人口があったことも昆布との関わりを深くする要因となったのではないでしょうか。

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「堺昆布加工業協同組合」は現在10社が参加する組合です。堺まつりには一回目から参加し、今年で41回連続の皆勤賞になります。
「『堺まつりには、あんたのところの昆布を買いに来るんだ』というお客様も多いんですよ」
と、さすがの貫録です。

■新たな「堺」名物は誕生するのか?
堺の企業や団体のブースも回ってみましょう。
山之口商店街では、「泉北そば」に長い行列が出来ていました。こちらはおそばの普及などを目的に、同好会から発展して生まれたNPO法人「泉北そば打ち普及の会」。
出来立てのおそばを受け取ったお客様に感想を聞くと、「美味しいです。毎年楽しみにしています」と、熱心なリピーターもいらっしゃる様子。

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すぐ近くでは「大小路界隈『夢』倶楽部」さんが、日本酒「夢衆」を販売していました。
「今年も出来がいいお酒だと、喜んでいただいています」
自治都市堺を支えた会合衆の心意気を蘇らせた「夢衆」。今ではすっかり忘れられていますが、堺は灘・伏見と並ぶ酒どころで、海外へも盛んに輸出されていました。来し方に思いをはせ一献傾けるのもいかげでしょうか。

環濠沿いのエリアでは、「&Rice」で工場取材をさせていただいた「松井泉」さんのブースも発見。社長の松井利行さんが元気な姿を見せていました。
「今日はあなごのお寿司を持ってきましたよ」
かつて美食家・北大路魯山人も取り上げた「堺名物」だったあなごの復活を目指しています。「堺といえばあなご」そんな言葉も耳にする回数が増えてきたようです。

そのお隣には、真っ赤なパッケージが目を引く、赤い柚子胡椒「ゆずからりん」さんのブースがありました。社長の安澤和子さんにお話を伺います。

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「最近は『ゆずからりん』の知名度が出てきたのを感じますね。堺だけでなく全国で、そして海外にも、ただの『ゆずからりん』じゃなくて、【堺】の『ゆずからりん』として意識して販売していきたいですね」
堺から日本全国、海外へ。堺商人の心意気が感じられます。

堺まつりには、まだまだ多くの飲食・物産ブースが出ていました。国内だけでなく、多国籍の屋台も数多く人気を集めていました。堺と海外の交流は過去だけでなく、今現在進行形のものなのです。

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こうした活発な交流の中からこそ、新しい堺の名物が生まれて来るのではないか。そんなことを思わせた堺まつりでした。

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FuchigamiTetsuya

FuchigamiTetsuya

&Riceライター。 フリークリエイター/ライター。彷徨のアート集団「PAO」として町と人をつなぐ関係性のアートを展開。「人」に焦点をあて記事を書いてます。

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