向田邦子の手料理
作家の向田邦子さんが大変な料理上手だったというのは有名な話。生涯独身だった彼女は人を招いてもてなすのも好きで、よく編集者や友人を招いては腕をふるっていたそう。
向田さんの料理に関するエピソードは小説でもエッセイにもふんだんに登場するので、本だけでなく彼女が脚本のドラマや、原作の映画を見た事がある方なら「そうそう」とうなずくはずです。
向田さんの小説やエッセイの食べ物の描写がなんとも美味しそうで作ってみたくなり購入したのがこの本「向田邦子の手料理」です。初版は25年前、私が購入したのは10年ほど前のこと。この10年、ぱらりぱらりと見返しながら使ってきました。ちなみに今でも現役で書店で売られています。
この本には、「大さじ○杯」など細かいレシピは載っていません。全て目分量、感覚頼り。
ほとんどがとてもシンプルな料理なので、逆に如何に向田さんが料理上手で、あるもので手早く料理する人だったのかが伝わってきます。
切る、焼く、煮る、だけ、のシンプルなものほどちょっとしたさじ加減が難しい。きっと向田さんはなんというか、すごく感のいい人だったのだろうな、という気がします。
本を見ながら美味しそうなトマトサラダを作ってみて、それが特筆すべき味でなくても、それは自分の腕が悪いだけ。いい感じの味になるまで、感覚を磨くしかありません。
レシピよりも、添えられた文章のほうが多い(エッセイからの抜粋など)、というのも向田ファンにはうれしいところ。
「あのエッセイのあの料理」が見たいので、これで良いのです。結局ほとんど読み物、かな。
ちなみにこの大根のにらのいため合わせ、何十回作ったかわからないほど作ってます。普通の家庭の料理だけど、どことなく昭和。
余談ですが、
私が20代後半の頃、世間ではえびちゃん、もえちゃんなどカリスマモデルが大ブームでした。その頃の私にとってのファッションアイコンはクニちゃん!
山田邦ちゃんではなく、向田邦子さん。お嬢様OLファッション全盛の頃に、昭和のモガのスカーフ使いやファッションに興奮していたのでした。
料理本ではありませんが、「<とんぼの本>向田邦子 暮しの愉しみ」という本にもレシピはいくつか登場します。
特筆すべきは、「向田邦子が選んだ 食いしん坊に贈る100冊」というページ。手に入らない本も多いですが、入手できた本があれば一つ一つ味わって読むべし、ですね。
出版社が毎年毎年する夏の100冊フェア、みたいなのを「邦子の100冊」にしてみたらいいのに。
私がとても残念に思っているのは、向田さんが妹さんと開店した”女性が一人でも立ち寄れる店”、小料理屋「ままや」に行ってみたかった、ということ。
「ままや」は向田さんの死後も妹の和子さんによって続けられていましたが、1998年に閉店。
1998年だと、私も行こうと思えば行ける年齢でしたが、「いつか行ってみたい」は叶うことありませんでした。
行きたいところは今行かなくては、「いつか」は無いよな、とこういう事からも思うのです。
Chinaru Higuchi
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